
起業すると、税金の事で損をする事があります。
私は税金に対して無知であるがために、1年で80万円近く、免除を受けられたはずの税金を支払いました。
起業前に税金が免除になる制度がある事は、税務署から親切には教えてくれないですから。
ここでは、起業前に知っておかなければ損をする税金のお話しをさせていただきます。
とある税理士さんの意味深な言葉
お世話になっている飲食店のお客さんと、税理士さんの話になった時の会話です。
客「おかもとさん、税金の事って税理士に任せてるの?」
私「いえ、お金がもったいなくて、税金の事は自分でやってます。」
客「俺、今年から税理士頼んでるんだけど、その人が税金の事は税理士に任せないと損するって言ってたよ。」
私「でも、税理士って、年間30万円とか平気で取られますよね?」
客「それでも、税理士に金払った方が最終的には絶対に得するって言ってたよ。
自分じゃなくてもいいから、誰かに頼んだ方がいいって。」
この当時、私は起業してからピークでお金がない時でした。
なので、年間30万円以上かかる顧問税理士料金は、易々と払える金額ではありませんでした。
税金の事はまったく分かりませんでしたが、起業してから3年間は、確定申告や決算処理等の税金の処理は、何とか自分でやっていました。
そして、結果的には、この税理士さんの言う通りでした。
起業前に知っておきたい消費税の仕組み

起業を決めたらまず一番最初に気にするべきは、消費税の事です。
あなたも買い物をした時には、今や消費税を一緒に支払うのが当たり前のようになっていますよね?
では、そのあなたが支払った消費税は、その後お店ではどのように扱っているのでしょう?
仮にあなたが税込1,100円の買い物をしたら、その内100円は消費税です。
お店としては、あなたが買い物を終えた時点で、あなたが支払った消費税分の金額、つまり100円を「預かっている」状態になるわけです。
これは分かりますよね?
じゃあ、その100円を税務署に収めるのか?
それは違います。
そのお店は、その税込1,100円、つまり税抜1,000円の商品を仕入れる時に、仮に原価率60%だとしたら、原価600円に対し消費税率10%で60円を仕入先に支払っているわけです。
※これを税務上はそれぞれ「仮受消費税」「仮払消費税」と言いますが、ここではややこしいのでこの言葉は使いません。
なので、お店があなたから預かった純然たる消費税は
あなたから受け取った100円-仕入先に支払った60円=差額40円
お店は税務署に40円を納める事になります。
これは次のように言い換える事が出来ます。
税抜売上額1,000円-税抜仕入額600円=利益額400円
利益額400円×消費税率10%=40円
同じ40円ですね。
つまり、お店としては、利益額×消費税率=消費税額を、税務署に収める事になるわけです。
まずはこれを理解しておきましょう。

起業後は税金を免除される仕組みがある
起業後2年は消費税の納付が免除になる仕組みがあります。
これは税金の話としては有名な制度なので、起業に関わる本を何冊か読めば、この情報にたどり着くのではないでしょうか。
起業してから最低2年は、上記でご説明した消費税は、納付を免除されます。
正確に言うと、年間(と言うか年度)の売上が1,000万円を超えた年の翌々年度の消費税について納付の義務があります。
言い換えると、売上が年間1,000万円を超えなければ、いつまでも消費税納付を免除されると言う事です。
例えば年間売上2,000万円、利益率50%(つまり1,000万円)の事業を立ち上げたとすると、図で表すとこんな感じになります。

赤い字の金額が、それぞれ丸々利益になります。
さらに、もし個人事業主で起業して、初年度から売上が1,000万円を超えたとしても、2年経ったら法人成りすれば、そこからさらに2年消費税納付を免除されます。
これは、個人と法人は別人格と言う考えからなるもので、同じ人が経営していても、個人は個人、法人は法人と言う扱いになるから、という事だそうです。
つまり、こう言う事になります。

ちょっと分かりづらいでしょうか。
この場合だと、個人事業2年で200万円、法人2年で200万円、合計400万円もの税金が支払い免除になります。
2年経っても消費税で得をする簡易課税制度

起業して初年度が年商1,000万円超えとなった場合、3期目からは消費税の納付をしなければいけません。
支払う税金の金額としては、かなり大きな金額になります。
でも、ここで一つ、消費税で得をする方法があります。
これが、簡易課税制度と言うものです。
詳しくはこちらの国税庁のHPに説明があります
簡易課税制度とは?
これはどう言う制度かと言うと、事業の業種ごとに仕入率を一定と見なして計算する事によって、煩雑な消費税額の計算を省略しようと言うものです。
先ほどのような計算ですね。
各業種には、みなし仕入率が決められています。
つまり、利益率も一定の率で計算して良いと言う事になっています。
みなし仕入率も、上記国税庁のHPに記載がありますので、ご興味があれば、ご自身の起業を検討している業種のみなし仕入率がどうなっているか、確認してみて下さい。
・・・と思ったけど貼りつけちゃいます。

簡易課税制度で利益を出す
私の業種でご説明させていただきます。
私の会社の業種は、第1種事業の卸売業に該当します。
みなし仕入率は90%、つまりみなし利益率は10%です。
そして実際の私の会社の利益率はと言うと、25~26%です。
ここでは計算しやすく25%で統一します。
すると、例えば売上2,000万円があった場合、実際の利益率25%で利益額500万円です。
なので、販売商品がすべて軽減税率に該当しない消費税率10%の課税だとすると、納付消費税額50万円となります。
では、これに簡易課税制度を当てはめて、みなし仕入率を適用するとどうなるでしょうか。
売上2,000万円、みなし仕入率90%で1,800万円、計算上利益額200万円、税率10%で消費税額20万円。
分かりづらいので表にしますね。

どうですか?
何の苦労も努力もしていないのに、税金で30万円も得しています。
こんなお得な制度もあるんです。
ただし、注意点があります。
この制度は、適用させたい年度が始まる前日までに税務署に届出書を出さないといけません。
個人事業主なら前年12月まで、法人なら前年の決算月まで。
これで数十万円も免除されるべき税金を払う事のないよう、覚えておいてくださいね。
知らないばかりに大損こいた私の話
これらの事を知らないと、本当にもったいない事になってしまいます。
私は無知なばかりに、免除されたであろう税金を80万円ほど支払ってしまいました。
私は、簡易課税制度の事を、起業3期目の決算月に知りました。
つまり、3期目はまともに消費税を支払いました。
3期目の売上は3,900万円、粗利益にこの時の税率8%をかけて、78万円ほど支払いました。
もし、簡易課税を適用していれば、売上3900万円×みなし利益率10%×消費税率8%=31万円で済んだのです。
そして、さらに残念な事に、私の起業1年目の売上額は、1,100万円です。
ここまでお読み下さったあなたなら、この残念さがお分かりでしょう。
もしもう100万円少なかったら、3期目の78万円は、1円たりとも払わなくて良かったのです。
しかも、それはコントロールが可能だったのです。
10ヶ月目くらいまでに気が付いていれば、決算月を1ヶ月前倒しにすれば良かった事です。
それが可能だった事を知った時には、とても悔やまれました。
こう言う事は、知ったもん勝ちなんですね。
税務署からは絶対に教えてくれません。
そして、冒頭の税理士さんの言葉
「税理士に金を払った方が、最終的に得をする」
私が今お世話になっている税理士の先生は、年間20万円足らずの顧問料で受けてくれています。
そしてこの先生は、おそらく78万円が免除になる方法を、教えてくれたと思います。
20万円払って78万円得するはずだったのです。
冒頭の税理士さんの仰る通りだったわけです。
税理士は最初から頼んだ方が良いのか?

以上が、私が起業してから5年足らずの間に知った、消費税の節税方法です。
誰に聞いたわけでもなく、実際に直面しただけのものです。
おそらく他にも知らないと無駄に支払う事になってしまう税金はたくさんあるのでしょう。
税務処理にはコストがかかる
節税の事は、基本的には日常では知りようがありません。
下手に自分の判断でやってしまうと、脱税になってしまうリスクもあります。
正しく教えてくれるのは、税理士さんしかいないわけです。
そう考えると、 税務の事は 税理士さんにお願いする方が、最終的には得をすると言うのは、その通りなのかも知れません。
まして、自分で決算処理や確定申告をするとなると、なかなか大変な手間と時間と精神力が必要ですから。
でも、税理士さんに税金の事を任せるには、お金がかかってしまいます。
私がお世話になっている税理士さんは年間20万円弱。しかもこれはかなりの格安条件です。
普通は年間30万円以上かかると思っておいた方が良いでしょう。
起業したばかりの時には、なかなか厳しい金額です。
税務調査対策にも税理士さんは必要
税理士さんに頼らず、自分で申告する事にはとても大きなリスクもあります。
それは、税務調査。
ほとんどの経営者の方にとって、悪魔のイベントと言ってしまって良いのではないでしょうか。
私は起業してから3年間、自分で申告処理をしていました。
その後、税理士さんとの初面談の時、決算書を見るなりこう言われました。
税理士先生:
これは・・・!
3期目でもう法人税を払ってしまっていますから、明日にでも税務調査が入ってもおかしくない状態ですよ。
利益が出て現預金も溜まって来ていて、税理士もいませんから、税務署としては「税金取り放題」と言う認識です。
税務署は、税理士を使っていない企業から先に狙い撃ちにして来ますから。
このタイミングで私の所に来て、良かったかも知れませんよ。
先生のこの言葉は、自分の値打ちを上げるためでも、私を脅すためのものでもありません。
この税務署のやり方自体は、他の方からも聞いた事がありましたので。
現実のものとして身近に感じると、やっぱり恐怖を禁じえませんね。
そういう意味でも、申告を自分でやるのは、リスクがあると言う事です。
起業してから税金処理はどうする?
税理士さんにお願いすると、契約条件にもよるでしょうが、原則、自分で会計処理をする必要がなくなります。
販売管理ソフトのデータと通帳と領収書を渡せば、毎月全部やってくれます。
ただ、これはこれでどうかと思います。
少しは自分でやってみて、その内情は知っておいた方が良いと思うからです。
自分で作った決算書を見る事は、税理士さんによってある意味自動的に出来上がってきた決算書を見るのとでは、受け取り方も変わってきます。
と言う事で、私が思うやり方をお話しさせていただきます。
起業1~2期までは、頑張って勉強しながら自分で処理。
3期目から税理士さんにお願いする。
自分で税金処理をする場合は、損をしないよう、今日お話ししたような制度の事は、絶対に忘れないでくださいね。
まとめ
このように、税金には、知ってさえいれば支払いを免除される制度が、いくつもあるのです。
これを知らないばかりに、免除されるべき税金を支払う事のないよう、起業前にある程度の税金の事は知っておくようにしましょう。
・個人事業最低2年、法人成り後最低2年は消費税が免除される
・簡易課税制度を適用すれば支払う消費税を抑えられる
・自分で確定申告し続けると、税務調査の標的になりやすい
他にもまだ色々あると思います。
今後も判明した事があれば、順次お話しして行きたいと思います。